果物や野菜の甘さをアピールするためによく使われる「糖度」。
しかし、「糖度が高ければ甘く感じる!」というわけでもありません。
今回は果物なんかでよく使われるBrix値(Brix糖度)と酸っぱさの指標にもなる「酸度」について書いていきます。
糖度と酸度
糖度
果物の糖度にはBrix値が用いられています。
そしてBrix値を測るために糖分屈折計を使います。これは光の屈折率がショ糖の濃度によって変化することを用いてBrix値を計測するものです。
Brix値は1gのショ糖が20℃の水100gに溶けているときを1度と定義して、そのショ糖水溶液と同じ糖分屈折計の値を示すものが1度だとしてあります。
………?
ショ糖水溶液と同じ値を屈折計が示せばそれもBrix値1?
ショ糖水溶液でなくても光の屈折率が変化すればBrix値がでる…?
塩水も…?糖度計で測ればBrix値がでる…?
はい。Brix値はでます。
糖度(Brix値)はショ糖だけを計っているわけではありません。
なので甘柿と渋柿の糖度を計ると、渋柿のほうが糖度計の示すBrix値が高い。
そんなことが起こります。「糖度=甘さ」ではないことがわかってもらえたでしょうか。
僕は「Brix値が高い=濃縮されていて濃い」そんな軽い認識です。
糖分屈折計は果汁を絞って計るため、果実を傷つけて計ります。
なので、売り物として出荷する果物の糖度を計ることはできません。
しかし、果物を傷つけること無く糖度が計れる機械が登場してきました。
近赤外線を用いているようで、糖分屈折計と比べると非常に値段が高いです。学生のときに見た機械は頑丈なケースに大切にしまわれていました。個人で持っている人もいるんでしょうか…。
果実選果場の選果機などには導入が進んでいるようです。なので糖度の高いものだけ選果することも可能になっています。
ちなみに独立行政法人農畜産業振興機構 お砂糖豆知識によると同じ質量を入れた場合、塩のほうが屈折率が大きく、Brix値は大きくなるようです。果物の場合はメインとなる糖は果糖なので屈折率は少なく、+補正がかかるようです。
屈折糖度計はAmazonでも買えますし、身の回りの糖度を計ってみるのも楽しいですよ。
お値段もリーズナブルで2000円もしません。
酸度
酸度は対象のものに含まれる酸の質量パーセント濃度です。
名前の通り酸味(すっぱさ)の指標となっています。
酸度は糖度のように液体を垂らして「はい、出ました!」と簡単に計測できません。
どうやって計測するかというと…。
中和滴定をして計測します。高校の化学で実験したアレです。ビュレット、ホールピペット、フェノールフタレイン…。
こんな実験器具を使います。
水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)の[OH-]と水溶液中の[H+]が反応して中和されます。
それを試薬で確認、試薬に変化するまでに使った水酸化ナトリウム水溶液の量から水溶液中の[H+]の濃度を計ります。
食べる人にとって算出方法はどうでもいいので読み飛ばしてください…
正確にやろうとすると、個体NaOHは空気中の水分を吸収しやすく、濃度が正確にならないため、酸を滴定するためのNaOH水溶液をシュウ酸二水和物((COOH)2・2H2O)で滴定して、濃度を計ってから酸の滴定に入るようです。
リンゴであればリンゴ酸を滴定して計測します。
具体的な方法を高校までの化学の知識で考えてみました…。
滴定用NaOHは単純に価数1、モル濃度は0.1mol/Lとして2mLのリンゴ果汁の酸度を計るとしましょう。リンゴ酸はHOOC-CH(OH)-CH2-COOH、モル質量は134mol/Lくらいでしょう。リンゴ酸のCOOHのHが電離しそうだからきっと2価でしょう。滴定した結果NaOHをl(エル) mL使ったとすると
1 * 0.1mol/L * l /1000L = 2 * Xmol/L * 2/1000L
X = l * 1/40 mol/L
コレにモル質量をかけると1L中にどのくらいのリンゴ酸があったのかわかるはず…。
多分3.35 * l g/L
それを質量%濃度に直せば…アレ?0.0035 * l % …?何処かで間違えてますね。きっと。
そもそも表示のための計算方法が存在してそこから逸脱しているようです…。理解できなかったのでごめんなさい省略させていただきます。興味のある人は見てください。こちら
リンゴであれば0.3%は酸度が低い、0.6%くらいから酸度が高めというように酸度も一つの目安ではありますが、一般農家が手をかけて酸度を計るメリットはないかと思います。
「ウチのリンゴは酸度が低くてすごく甘いよ!」と宣伝するよりも「糖度が高くてすごく甘いよ!」と言ったほうが直感的で伝わりやすいですし、糖度なら簡単に計る事ができます。
果物は糖度、酸度だけでは計れない!
糖度、酸度は果物の特徴として数値がスパッと出てくるので「こんな果物ですよ!」と紹介するときには真っ先に登場します。
しかし、数値を見ただけで魅力が伝わる訳はありません。
確かに糖度、酸度は美味しさの指標の一つですが、香りや色、歯ごたえなどの特徴も含めて果物の魅力です。
要するに…。実際に食べてほしい!と言うことです。品種お試しセットみたいなのがあればいいですが、旬は素早く移り変わるので難しいかもしれませんね。
「糖度を上げるために、葉っぱを摘みません」という文句を聞いたことがあります。糖度は実際に上がるようです。
でも、それ以上に「着色促進のための作業が省略できるのが良い」らしいです。
色の付いてない白いような微妙な色をしたリンゴはあまり人気がないものですが、こういった方法で売っていくのも手段の一つですね。
まとめ
- 糖度(Brix値)はショ糖の量ではなくて、溶けている成分の濃度を計っているだけ!
- 酸度は[H+]の量を計ったものだと思うけど面倒、難しい…。
- 糖度と酸度のバランスが大切、糖度が高くても酸度も高ければ甘さを感じにくい!
- 糖度、酸度は美味しさの指標の一つ、やっぱり実際に食べてみて!
僕は酸味と甘味のバランスが取れたリンゴが好きです。甘い果物を食べたかったら甘柿を食べると思います。
おまけ(いろんな糖度をはかってみた)
ジンジャエールと一緒に写っているように割り箸で糖分屈折計を固定して撮影しました。
青と白の境界の目盛りを読むことで糖度(Brix値)が確認できます。
簡易的な固定でスマホ撮影なので細かいところまでは確認できないかもしれません。ご了承ください。
渋柿(17.8%)
甘柿(15.4%)
南水(11.8%)
リンゴ たぶん早生ふじ(14.2%)
ジンジャエール(8.6%)
甘柿 熟してペタペタ(23.8%)
渋柿のほうが甘柿よりも糖度(Brix値)が高いですね。「糖度の高い柿ちょうだい。」と言われたらペタペタの甘柿か渋柿を渡してあげましょう。
ジンジャエールの糖度は低いですね。寝る前にジュースを飲むよりも果物を食べたほうが太りやすいってことでしょうか?(そうではないことを信じていますが…。)
甘柿(ペタペタ)の糖度に驚きました。熟すと水分が抜けて濃度が濃くなるから高くなるんでしょうか。そうだったとしたらリンゴもシワシワになるまで置くと糖度は上がりそうですね(笑)
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