【牧田豊さんインタビュー記事1】「轟天号を追いかけて」と牧田さん

 

先日、田切駅の石碑が気になったので誰が建てたのか役場に聞いてきました。石碑を建てたのは伊那市役所の自転車サークル「Cycle倶楽部R」の代表 牧田 豊さんだということ知ったところから今回は始まります。

飯島町について知るためにとりあえず自転車で走ってみた

2018年8月22日

 

かくいう僕も「究極超人あ〜る」も「轟天号をおいかけて」もほとんど知りませんでした。知っていたのは田切駅が何かのアニメに登場し、そのアニメのファンが田切駅の清掃をしていたこと。昔の下村酒店にスタンプ?が置いてあったらしい。そして近年イベントを開催しているらしい。ということ。

何も知らないまま取材に行くことは不可能なので作品について調べたり実際に視聴しました。

「究極超人あ〜る」(原作:ゆうきまさみ)は1985年〜1987年に連載された学園コメディ漫画です。春風高校光画部(一般的に言うと写真部)に所属するご飯を燃料に動く人並みの知能を持ったアンドロイド「R・田中一郎」とその周りの非常識な面々との日常(非日常)を描いています。なんと単行本は新刊10巻が今年(2018年8月)31年ぶりに発売されました。

その漫画のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)の中に田切駅が登場するシーンがあります。それも終盤のクライマックスシーンへとつながる場面です。(OVA公開は1991年)

飯田線を巡るスタンプラリーをしていた光画部一行、18時までに伊那市に到着するのが目的のはずが何故か自然に田切駅で下車。「飯田線といえば田切が目的地ではないか」という鳥坂先輩(目立つ眼鏡の人)。18時前に伊那市に到着する電車はもうない!もうスタンプラリーは絶望的!「R・田中一郎」が持参した自転車「轟天号」を10人乗りに改造して1時間以内に伊那市駅を目指す!

ここから現実のイベント「轟天号を追いかけて」とリンクします。

ここまでくれば「轟天号を追いかけて」が何をするイベントなのかがわかると思います。そう。轟天号を追いかけて、田切駅から伊那市駅まで1時間で走りきるイベント。正直言って「信じられない!普通こんなこと考えつく?」というイベントです。

自転車で走りたい方は誓約書を提出して登録(応募多数の場合は抽選)する必要がありますが、参加費は無料、コースも自由、10人乗り自転車は不可、コスプレ、にぎやかし大歓迎というなんともフリーダムなイベント…。

こんなイベントが自宅から自転車で1分の田切駅で開かれている事自体信じられませんでしたし、聖徳寺の駐車場に「聖地巡礼発祥の地」という石碑は建っているし、イベントは年々大きくなっているようだし…。

見慣れている田切駅で起こっている事をこのまま何も知らないでいるのはもったいない!という本当に単純な興味からお話を聞きに行ってきました。

 

僕のように田切駅は知ってるけど「究極超人あ〜る」も「轟天号を追いかけて」も知らない人もこの記事を読んで少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいなと思います。(全国的には僕のパターンのほうが稀でしょうが。)

 

イベント「轟天号を追いかけて」はどのように始まったのか、「聖地巡礼発祥の地」の石碑に込めた思いや、「究極超人あ〜る」の魅力はどこにあるのか、イベント「轟天号を追いかけて」発起人(Cycle倶楽部R代表)牧田豊さんに聞いてきました。

 

長くなったので記事は分割してあります。

 

ふたつめの記事はこちら

【牧田豊さんインタビュー記事2】田切駅と究極超人あ〜る

2018年9月29日

みっつめの記事はこちらへだうぞ

【牧田豊さんインタビュー記事3】聖地巡礼発祥の地の石碑やイベントのこれから

2018年9月29日

 

自転車は牧田さんのライフワーク

イベントを知るにはまずイベントを作り上げた人はどんな人なのかを知る必要がある!

という勝手な僕の思いで牧田さんと自転車との関係について最初に聞きました。

 

自転車は30年以上乗っています。ライフワークとして日本の海岸線を自転車で一周しようと走っています。本州、四国は走り終わっていて今年九州が終わります。離島も佐渡、淡路島、小豆島は自転車で走りました。自転車で走ったことのない県は奈良県、沖縄県となぜか岐阜県です。岐阜県はすぐそこなんですけどね。来年からは北海道をまわろうと思いますが、北海道はまず行くのが大変ですね。新幹線は札幌までですし、道東に行くとなると飛行機使うしかないです。

 

ロングライドが楽しくて仕方がない。

 

田切駅から伊那市駅まで1時間で走る。というイベントの発想をもって実行してしまうほど自転車乗りの牧田さん。

どんなスタイルで自転車を楽しんでいるのか聞いてみました。

通常のトレーニングはだいたい週一回です。コースは自宅から高遠へ出て杖突峠を越えて諏訪へ下りてから有賀峠を越えて辰野へ下りて帰ってきます。距離は73kmで3時間半くらいです。

長い距離を走って様々な場所を巡るロングライドが楽しくて仕方ないです。電車などの公共交通機関を利用して自転車を運ぶ輪行との組み合わせが私の主体ですが、民宿に泊まるので装備はウエストバッグとフロントバッグだけですごく身軽です。サイクルジャージとレーパンで走ってそれを毎日洗えばいいので他に必要なものもほとんどありません。ただ私の経験から言うと毎日やるなら絶対に石鹸で洗わないといけませんね。

ーー1日どのくらい走るんですか?

一日の移動距離は100kmで考えていますが日によって120km走ったり130km走ったりします。でも私の場合は宿をとってあるのできっちり計画通りに走ります。

 

牧田さんと「轟天号を追いかけて」

市役所の自転車サークルが主体となって全国から人が来るイベントを企画運営している。これはにわかには信じられないものでした。イベントの運営能力は仕事で培ったものなのでしょうか。

「轟天号を追いかけて」の始まりについても聞いてみました。

昔は観光課にいました。今は高遠の施設管理や伊澤修二音楽会に取り組んでいます。様々な行事やイベントの運営もたくさんやっているのでノウハウもあります。だから「轟天号を追いかけて」の運営も苦ではないです。でも1年目、2年目はベースを作る必要があったので大変でした。今はベースも固まって、登録の半分以上がリピーターということもあり業務はだいぶ楽になっています。

ーー「轟天号を追いかけて」はどのように始まったんですか?

OVAの公開翌年に市役所の自転車が好きな人達に声をかけて「本当に1時間で走れるかどうかやってみよう。」と7人くらいで走ったのが始まりです。そのとき伊那市駅に80周年記念のバナーが貼ってあったのを今でも鮮明に覚えています。そのときに「それじゃあ、100周年の時にはゆうきまさみ先生も呼んでみんなで走ろう」なんてことを言いました。

Cycle倶楽部Rはこのときに結成されました。Cycle倶楽部Rの「R」はもちろん「究極超人あ〜る」の「あ〜る」なんですが大抵の人は「Rってかっこいいですね。」「Race の R ですか?」「Route の R ですか?」と言っていました。本当のことを説明すると知っている人以外はみんなキョトンとします(笑)

伊那市駅100周年の年には観光の担当をしていた先輩に「あれ、牧田くん?田切駅から走らないの?」と言われました。それで「やらなきゃいけない!」と思ってイベントの企画をはじめました。

 

伊那市駅100周年に合わせて「轟天号を追いかけて」を開催

豊橋から田切まで飯田線に乗ると5時間かかります。本当にこんなアクセスも悪いところに人が集っているんだろうかと僕はずっと疑問でした。(今も信じられない気持ちがあります…)

牧田さんにも不安があったそうです。

第1回目は観光課が協力する体制だったので伊那市の観光協会のホームページに掲載して、プレスリリースもしました。「轟天号を追いかけて」が多くの人に知られたきっかけは中日新聞が取材に来て東京新聞に掲載されたことだったと思います。

私も「ほんとにみんな来るのかな…?」と思っていました。インターネット掲示板の2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)にも「あ〜るのファンなんてオヤジばっかりだから自転車こぎすぎて死ぬ。」なんていう悪口も書かれました。それでも蓋を開けてみたら50人までの登録に対して65人応募がありました。それも7〜8割が県外からの応募で驚きました。

東京で活躍されているルポライター昼間たかしさんも第1回目から来てくれてレポートを書いてくれています。そのレポートを見たことがきっかけで参加してくれる人もじわじわと増えてきています。ここ数年は見物に来る人やコスプレだけに来る人、ガチな鉄道ファンといった自転車で走る人以外の人が増えたという印象を持っています。

紫色の髪のコスプレをする方は飯島のまちの駅でシュミレーターをやっているときにも来ていました。私は直接会うことはできませんでしたがあとで写真を見たら写っていました。

シュミレータをやっているときに僕も偶然まちの駅に行きました。

【飯島町サイクリングMAP】Cコースを走ってみた

2018年8月31日

 

ーー鉄道ファンの方も来るんですか?

「田切ネットワーク」という名前を聞いたことはないですか?もともと「究極超人あ〜る」のファンから始まっていますがガチな鉄道ファンです。年に3回くらい田切駅に集って掃除をして交流している田切駅が好きな方々です。まちの駅で飯島町開業100周年の行事をした時の鉄道展は田切ネットワークのみなさんが制作してくれました。田切ネットワークの皆さんとも仲良くさせてもらっていて準備等も手伝っていただいています。

全国に「究極超人あ〜る」ファンは多いですが「遠いからなかなか来られない。」とか「休みが取れないから来られない。」と言う人もたくさんいます。それでもみんなが楽しんでくれれば嬉しいです。感覚的には「私と一緒に遊んでくれてありがとう。」ですね。

 

「轟天号を追いかけて」の構造はシンプル、そして思いっきり楽しむ。

「轟天号をおいかけて」は今年7回目。こんなド田舎で予算もかけず成長し続けるイベントを継続していくということはとても難しいことだと思います。

でも、大きなイベントになりすぎるとすごく大変になるんじゃないでしょうか?

イベントの開催方法に関して影響を受けているのは自転車を扱う企業ライトウェイの御子柴さんに教えてもらったヨーロッパの自転車イベントです。当日にスタッフが集まってそれぞれの役割を確認したら各々が的確に動いてそれで成立してしまう。自転車に慣れ親しんだ人であればある程度共通の認識があるので自分の役割は何をすべきかわるんです。例えば野球が出来る人が集まったチームであったならルール説明することも無く試合が進むのと同じことだと思います。

そんなイベントを理想としているので「轟天号を追いかけても」事前のミーティングは一切ありません。メールで集合時間だけ伝えて当日ミーティングをして役割を確認したら各々が動き出します。やることといっても受付、整列、スタートのコントロールと国道に出る場所の安全確認くらいなのでとてもシンプルです。構造がシンプルであれば続けていくことも難しくはないですし、構造をシンプルにすることによって何を楽しむのかを明確にしています。

 

「角があったら曲がらなねばならん。」

僕は自転車のイベントなのにコースが自由ということにも驚きました。

作品中で鳥坂先輩が「角だ、曲がれぃ、角があったら曲がらねばならんのだ!」R・田中一郎も「そうですよ。目的地までまっすぐなんて…あぁ、嫌だ。そんな恐ろしいことはとてもとても…」という発言がある通りまっすぐ伊那市駅に向かっていないことがわかります。

これに倣ったんでしょうか…。まっすぐ伊那市駅に向かうだけでも大変なのでは…。と思うところですが…。

「角があったら曲がらねばならんのだ!」の言葉の通りコースはどこを通ってもOKです。目標は1時間以内に伊那市駅に到着することです。作品中では寄り道をして峠や中央道を走りますが流石に中央道は走ってはいけません。ただ、ファンの中では「作品中に登場する峠は火山峠だ。」という見方が定着してきています。なので本当に轟天号を追いかけるなら田切駅から火山峠を通って伊那市駅まで1時間を切る。これが達成できれば「R・田中一郎」に近づいた証になります。

平地(国道ルート)であればあまり苦労すること無く田切駅から伊那市駅まで1時間を切ることができます。実際に「轟天号を追いかけて」をきっかけに自転車に乗り始めたり、自転車を始める人もいます。しかし、火山峠を通るルートとなると相当自転車に乗り込んだ人でないと達成できないと思います。私もなんとか火山峠ルートで1時間をギリギリ切れるくらいです。そろそろ無理かもしれません。

ーーゴールはどのくらいの人ができるんですか?

ゴールはもちろん全員してもらいます。速い人だと大阪から来たの方で国道を通るルートを33分くらいで走りきる人がいます。誰か彼の記録を破る人がいないだろうかとも思っています(笑)火山峠を通るルートでも早い人では50分の前半くらいで完走していると思います。

 

 

 

続きます。続きはこちら

「轟天号を追いかけて」に集う人や田切駅と「究極超人あ〜る」について話を聞きました。

【牧田豊さんインタビュー記事2】田切駅と究極超人あ〜る

2018年9月29日

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