一、果樹園的宝くじとは
要するに実生の栽培、品種の育成です。
普通我々果樹農家が育てている苗は何も種子から育てているわけではなく、どこかの誰かが見つけた品種を接ぎ木したものを苗木屋さんから買って栽培がスタートします。
いわばクローンです。もとを辿れば一本のりんごの木にたどり着きます。
そして品種にも著作権的な権利があります。種苗法ってやつでしょうか。正直詳しくないので各々調べてください。この権利が曖昧だと勝手に何処かで作られて品種を作った人は育種にも手間がかかってますから大損です。シャインマスカットとかいちごの品種が問題になったりしてましたね。
歌や本と一緒で品種が広く使われるようになれば権利料で儲けることができるのではないか。そんな話です。
そんな簡単に儲かったらみんなやってるだろうからそんなにうまくいかないでしょう。
ただ、興味があったのでやってみました。
攫、購入代金
購入代金は主に手間代、場所代でしょう。買ってくるものは種をまく土くらいでしょうか。
ジョウロや苗ポットは一応農家なのでそこら辺にありました。
本当は親をどれにするとか深く考えたりするんでしょうが思いつきで動いているのでそんなことはできません。考えるなら前年の春にやっておく必要がありますから。
というわけで余っていたふじの種を適当に蒔いてみました。花粉親がおそらく美味しくない品種なので種からできるのものには期待できませんが「あぁ、こういう感じか」と思えれば今年はそれでOKということで。
花が咲いたときにはなんとなく「炎舞」×「ムーンルージュ」、「炎舞」×「シナノピッコロ」、「ムーンルージュ」×「シナノピッコロ」で受粉作業をしてみました。(今思えば早生の品種を親にすればよかったと思いますが、まぁいいや。うまくいく保証はないですし)というわけで受粉作業した果実は今年の秋冬来年の春のお楽しみ。
さて、手間代、場所代を考えます。
手間代
- 種まき(1分/個)
- 水やり(45分/個)1回5分180日20個発芽したとしましょう。
- 植え替え(5分/個)
- 接ぎ木(2分/個)
- 収穫(0.2分/個)
- 選別(3分/個)
- 日頃の管理(0.25分/個)×5回くらい
合計57分くらいになりましたが切りよく60分/個としましょう。時給900円なら900円/個
場所代
- 種からのやつを植えとく場所(0円)(適当に植えておきたいなぁ…。)
- 接ぎ木する木(2000円)×数年(3年くらい?)(木があるのに売れる品種がない機会損失と考えれば一枝このくらい?)
6,900円/個
なんとなく適当に計算しましたがやけに高い宝くじだなこりゃ。
千、当選確率
2000個に1個くらいらしいですね。
つまり。品種になるレベルのものが現れるまでにかかる費用は6,450×2000
12,900,000円(1290万円)選抜されるものもあるので実際はこれより少なくなりそう?
そうだったとしてその品種がヒットするかどうかはわからない。専門に育種している人たちがいてもふじに代わる品種はないですし、つがるも未だに現役です。
売り込みも個人が育種した品種だと行政はプロモーションしないだろうし…。なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ。
金、期待値
期待値ってのは投資額に対する平均リターン額だそうですが今回はリターン額がわからないので算出できません。
宝くじの期待値が150円、普通に栽培品種を作れば確実に利益が出る。そんなことを考えると個人でほそぼそ育種する理由とは…。ってなりますね…。
労力込みとは言え5,000,000円くらい入っても回収できないとなるとなんか笑えてきますね。
理屈で考えたら育種なんてしないで普通にりんご作って売ったほうが賢いです。
残ったいいこととしては名前がつけられます。公序良俗に反しない名前なら
「スーパーミラクルハイパーウルトラアップル」でも
「キングオブジャパニーズアップル」でも
「寿限無寿限無五劫の擦り切れ海砂利水魚の水行末雲来松風来末食う寝る処に住む処藪ら柑子の藪柑子パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」
でもいいのです。多分。
なにはともあれ、自分の付けた名前が後世に残るかもしれないと思うとそれだけでなんか楽しそうじゃないですか?
おわり。
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