【信州大学伴野教授開発】スーパー赤果肉リンゴはどんな品種か考える

2018年10月12日(金)長野日報掲載の記事を見た管理人が手元にある資料から「IHR17」と「IHR32」について勝手に考察するものです。

アイキャッチ画像はイメージです。今回のメイン「IHR17」「IHR32」ではありません。ご了承ください。(写真の品種は炎舞)

間違い等ありましたらご指摘ください。

 

イチオシ赤果肉品種の紹介はこちら

【リンゴの中が赤い!?】赤果肉リンゴをちょっと詳しく紹介するよ

2018年8月1日

 

何が「スーパー」赤果肉?

スーパーと言うからには何か今までの赤果肉リンゴになかったものがあるはずです。

それは、「赤果肉を作り出す原因遺伝子を2つとも持っている」こと。

1999年から赤果肉リンゴの研究に着手した伴野教授。

赤果肉を作り出す遺伝子は2種類あって、それぞれ

  1. 早生で生育初期から果肉に赤色が入っている(Type 1
  2. 晩生で収穫期に赤色が入ってくる(Type 2

という性質があります。

2013年から上記2タイプを掛け合わせる研究を始めたとのこと。

乱暴な言い方をしてしまえば「原因遺伝子を両方持っていればより安定した赤果肉ができるのでは」ということだと思います。

「いろどり」に「ハニールージュ」をかけ合わせ育種されたのが「IHR17」と「IHR32」とのこと。

「IHR17 」は小玉で酸味が強く加工向きで赤色を発色させるアントシアニン含有量が非常に多い

「IHR32」は大玉で収量性が高い。「IHR17」より酸味が少なく、加工や生食に向いている。

両品種とも中生種なのできっと今年はすでに収穫されてしまっていますね。

低地でも栽培できる要素を持っているため農家の生産拡大に繋がることが期待されています。

 

 

記事の概要はこんな感じでした。

さて、もうちょっと考えていきましょう。

 

スーパー赤果肉リンゴがどんな品種か考察する

「IHR17」と「IHR32」を実際に見たわけではないのでどんな品種なのか親の品種から考察していきましょう。

 

親1(めしべ親)「いろどり」

「いろどり」は中野市の吉家一雄さんが「紅玉」と「ピンクパール」から育成した品種です。

このブログでも紹介した「ムーンルージュ」や「炎舞」の親としても使われています。

「ムーンルージュ」や「炎舞」の紹介はこちら

【リンゴの中が赤い!?】赤果肉リンゴをちょっと詳しく紹介するよ

2018年8月1日

10月下旬の収穫とのことなので収穫期に果肉が赤く着色するType 2の遺伝子を持っていることがわかります。

糖度は14.2%酸度0.54%とカタログには表記してあるので「秋映」や「シナノゴールド」より少し酸っぱい感じでしょうか。濃厚な味という表現もできるかもしれません。

大きさは350gほどなのでとても大きいわけでも、小さいわけでもない大きさですね。

ちなみに中野市のみで栽培できる限定品種です。

 

親2(花粉親)「ハニールージュ」

こちらは信州大学農学部が「つがる」と「メイポール」から育成した品種です。

9月上中旬に収穫される早生品種で生育初期の頃から果肉が赤く着色しているType 1の遺伝子を持っています。

糖度は13%酸度0.8%(信州大学農学部果樹研究室のHPより)なので味としては紅玉に近い酸っぱさなのかと想像できます。豊産性があることもあり加工用が良さそうですね。

大きさは120〜150gなのでかなり小さいと思います。(まるかじり品種シナノピッコロが200g程度)

形質はメイポールに近いところが多いでしょうか…。

ちなみに栽培のためには信州大学の知的財産を管理する機関への申請が必要とのこと。

 

新品種の親の親も考えてみる

「いろどり」の親「紅玉」

酸味が強いアメリカ生まれの酸味のつよい中生種です。記事にもまとめてあるので詳しくはこちら

歴史ある品種「紅玉」って知ってる?【酸味とともに歴史を味わう】

2018年9月30日

 

「いろどり」の親「ピンクパール」

こちらもアメリカ生まれ、酸味が強く調理用の赤果肉リンゴ、糖度は12%酸度は1.1%(農研機構 ローズパールのページ参照)、紅玉なんて吹き飛ぶような酸っぱさが予想できますね…。果肉の色はきれいな桃色で果皮は淡黄緑色、後の品種を見るにType 2の遺伝子を持っているようです。

 

「ハニールージュ」の親「つがる」

早生種(8月〜9月上旬)の代表。青森生まれで糖度13〜14%酸度は0.3%。酸味が少なく食べやすい品種。ちなみにつがるの花粉親は紅玉

 

「ハニールージュ」の親「メイポール」

受粉用(果実をつけるための花粉用)の品種の代表、きれいな赤色の花を咲かせる赤果肉のリンゴ。葉っぱまで赤色が入っています。生育初期から赤色が入っているType 1の遺伝子を持っているようです。
味は…「食べられたものではない」という僕の正直な感想。酸が強くとても酸っぱいことも一つですが、独特の渋みというかエグみがありジャムにしても不評でした。普通の園では受粉用と割り切って導入され実は収穫されません。(花がたくさん咲いて受粉用としては超優秀)

 

味を考えてみよう

「IHR17」と「IHR32」の親と親の親の糖度と酸度を並べてみましょう。

並べたところであまり参考にならないかもしれませが…。

果物の糖度と酸度についての詳しい話はこちら

【糖度が高い=甘い?おいしい?】糖度と酸度について

2018年10月22日
 糖度酸度
いろどり紅玉✕ピンクパール14.2%0.54%
ハニールージュつがる✕メイポール13%0.8%
紅玉エソーパスの実生13%0.6〜0.8%
ピンクパールScarlet Surprise自然交雑実生?12%1.1%
つがるゴールデンデリシャス✕紅玉13〜14%0.3%
メイポールWijcik McIntosh✕Baskatongデータなしデータなし

酸味の強い品種が多いような気がしますね。「いろどり」も「ハニールージュ」も酸味強めの品種なので「IHR17」はかなりの酸味、「IHR32」もどちらかと言うと加工向きなのではないかと予想しています。

食べてみないとわからない部分も多いので食べる機会があれば積極的にたべてみたいとおもいます。

 

ちなみに「ムーンルージュ」は糖度14.2%酸度0.52%、「炎舞」は糖度13.7%酸度0.4%両品種とも親は「いろどり✕ふじ」

書いていて思ったが果物は糖度と酸度では測れない。是非いろんな品種を食べてみてほしい。

 

個人的まとめ

  • 赤果肉の原因遺伝子2つ持っていると言うのは非常に興味深い。
  • 原因遺伝子を2つ持つことによって果肉の着色が安定しているなら嬉しい。
  • 「IHR17」は小玉で酸味が強く加工向き。
  • 「IHR32」は大玉で収量性よし。生食として売り出せるかは食べてみて判断。
  • 低地での栽培も可能になり赤果肉の生産拡大、知名度UPにつながれば嬉しい。

 

 

余談

「IHR17」「IHR32」は生育初期から果肉に赤色が入ってるのかはわかりませんでした。

赤果肉リンゴは生食で売り出したいなー。と思っているので「IHR32」に期待しています。栽培のために面倒な権利のあれこれが必要なら二の足を踏んでしまうかもしれませんが…。品種名にも期待です。

「IHR17」は明確に加工向き品種となっているのでリンゴ農家の品種の新しい選択肢の一つとして広がることを願います。

 

以上。スーパー赤果肉リンゴについて調べるついでにまとめました。

 

最後までお読み頂きありがとうございました。
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